
それほど遠くない過去のiPad発表をめぐる騒動を受けて、スティーブ・ジョブズによる新デバイスのプレゼンテーションで何が示されたのか、そして何が欠けているのかについて考えていました。そして、デモでは紹介されなかった、あるいはiPadに搭載されていない機能が2つあることが分かりました。これらは、iPadの将来像にとって不可欠なものです。偶然にも、これらの機能にはどちらも「マルチ」という言葉が含まれています。マルチタスクとマルチユーザーです。
同僚のロブ・グリフィスがiPadの5つの最悪の驚きについて書いた記事の中で、マルチタスク、つまり2つのプログラムを同時に実行できないことを嘆いていました。彼はこう指摘しています。「2つのアプリを切り替えられるインターフェースを設計するのはかなり簡単でしょう。Exposéの亜種か、3本指のツイストスワイプくらいでしょうか。OS Xのような完全なマルチタスク機能(もちろんあったら素晴らしいのですが)について話しているのではなく、重要なアプリを1つか2つ、バックグラウンドで開いておける機能について話しているのです。」
実際、マルチタスクは、AppleがiPadで宣伝してきた主要機能の1つであるiWorkに不可欠なものです。Keynoteプレゼンテーションを作成しようとしたときに、他のファイルにアクセスできず、インターネットでデータ、引用、またはその他の情報を確認することもできないとしたらどうでしょうか。確かに、iPadにはすべてのアプリケーションからアクセスできる共有フォルダがあると報告されています。したがって、プレゼンテーション、Pagesドキュメント、またはNumbersスプレッドシートで使用することが既にわかっているテキストファイル、グラフィック、ビデオ、および音楽ファイルをそこに保存できます。しかし、ほとんどの人と同じように、ドキュメントのすべての手順を事前に計画しているわけではなく、作業しながら作成しているのではないでしょうか。Webで何かを確認したり、Numbersスプレッドシートからデータをコピーする必要があるたびに、たとえばKeynoteを終了しなければならないとしたら、アプリの切り替えに多くの時間を費やし、制作に十分な時間をかけられないでしょう。
AppleがiPadを、単に閲覧するだけでなく、ドキュメントを作成するデバイスとして真剣に受け止めてもらいたいのであれば、マルチタスク機能は不可欠です。チャットを続けたり、Safariを終了せずにメールをチェックしたりするだけでなく、生産性向上に必要なすべてのアプリケーションを使い、必要に応じて切り替える必要があるからです。
2つ目の「マルチ」とは、複数のユーザーです。Appleが紹介しているデバイスは、多くの場合、家族で共有されるものです。おそらく、一人のユーザーがデバイスを手に取り、自分のメールをチェックしたり、お気に入りのウェブサイトにアクセスしたりすることになるでしょう。しかし、そのユーザーがデバイスの設定をまだ行っていない場合、状況は複雑になります。確かに、iPhoneやiPod touchのメールアカウントを複数設定することは可能ですが、そうすると、アカウントを設定した全員が、他のユーザーのアカウントに届いたメールを読むことができます。ウェブブラウジングでも同じことが言えます。自分がよく利用するウェブサイトには特定の設定をしておきたいと思う一方で、妻や息子はそれぞれ異なる設定をしたいと思うかもしれません。(他のユーザーがFacebookなどのサイトにアクセスするたびに、ログインとログアウトを繰り返す必要があることを想像してみてください。)さらに、息子のブックマークを自分のSafariセッションに残しておきたいでしょうか?Pagesで作成中の誕生日パーティーの招待状はどうでしょうか?妻には絶対に見せたくありません。
電子書籍の読み方はどうでしょうか?Kindleアプリを使ってiPod touchで本を読むと、私の読み位置が保存されます。妻が同じ本を読み始めると、彼女の読み位置が最後に保存されます。iPadで雑誌や新聞を読む場合も、おそらく同じようになるでしょう。それからゲームについても、ハイスコアを保存するための独自の設定や好み、ユーザー名を持つことができるでしょう。iPadが共有デバイスとして成功するには、ユーザー固有の情報や設定を保存する方法が必要になるでしょう。
ユーザーアカウントはMac OS Xの最初のバージョンからMac OSの一部であり、iPhone OSにも実装できない理由はありません。iPhone OSには既にシステム機能ごとに異なる「ユーザー」が存在しているからです。iPadでユーザーアカウントを作成するのはそれほど複雑ではないでしょうし、Appleはユーザーが必要に応じてiPadを自由に使い回せるような、一種の高速ユーザー切り替え機能を導入できるかもしれません。
これらの機能がなくてもiPadが駄目になるわけではありませんが、iPadが将来的に目指すような多様なデバイスとなるには、これらの機能が役立つことは間違いありません。iPadで実行できる様々なタスクを最大限に活用するには、柔軟性が不可欠であり、これら2つの「マルチ」機能は、iPadの使いやすさを向上させる上で大きな役割を果たすでしょう。
[上級寄稿者の Kirk McElhearn は、自身のブログ Kirkville で Mac 以外のことについても書いています。 ]