
Apple が社名を Apple Computer から Apple Inc. に変更したことは、消費者のデジタルライフの中心としてのパーソナルコンピュータに重点を置くという Apple の方針から、接続されたさまざまなデバイスとサービスによって駆動されるエコシステムへの移行の第一歩となりました。
このエコシステムを繋ぐのがiCloudであり、Apple製品におけるiCloudの存在感の高まりこそが、消費者にとってパーソナルコンピュータから移行する時代を象徴しています。つまり、Amazon、Google、Microsoftなどの他の企業と同様に、Appleは消費者にパーソナルクラウド体験を積極的に伝え、デバイス間、場所間でコンテンツがシームレスに流れるという期待を抱かせようとしているのです。
iCloudは、Appleが提供するパーソナルクラウドサービスとアプリケーションの集合体であり、ユーザーは状況に応じてコンテンツを保存、同期、共有できます。これにより、Mac、iPad、iPhone、Apple TV、あるいはクラウド機能に接続できない将来登場する架空のデバイスなど、デバイスを問わず、デバイス間、画面間、場所を問わず、コンテンツを必要に応じて利用できるようになります。
iCloudやパーソナルクラウドサービスは、オンラインストレージと同義語とみなされることがよくあります。つまり、まるで空中にあるPCがローカルのハードドライブの代わりをしているかのように見えるのです。パーソナルクラウドサービスにおいて、ストレージは重要な要素ですが、同期、共有、ストリーミングも同様に重要です。iCloudは、これらすべての面で消費者に力を与えているのです。
消費者のロイヤルティをパーソナルクラウドサービスに結び付けるという考え方によって、これまで消費者のプラットフォーム導入は主に単一プラットフォーム上でのアプリケーションの可用性によって左右されてきた状況が一変します。これは、マイクロソフトがPC時代に成功を収めた理由の一つです。パーソナルクラウドサービスが消費者が接続する複数の画面上で利用できるという事実は、特定のプラットフォームやデバイスの重要性という消費者の認識を、エコシステム全体の重要性へと変化させます。
Appleはデバイスとソフトウェア統合の両方を所有しているため、パーソナルクラウドサービスにおいて最も包括的なエンドツーエンドのエコシステムの一つとなっています。これにより、AppleはすべてのAppleデバイスで一貫したエクスペリエンスを提供できます。Appleは、必要に応じてiOSデバイスの大規模なインストールベースの恩恵を受けることができます。2012年後半にリリース予定の次期OS X、Mountain LionでiCloudのサポートを強化しているのも当然と言えるでしょう。
ポストPCの世界と呼ぶにせよ、PCプラスの世界と呼ぶにせよ、パーソナルコンピュータの時代は進化を遂げました。消費者にとって、パーソナルクラウド、そしてデバイスとサービスのエコシステム全体が、新規顧客の獲得と既存顧客の維持に貢献するでしょう。この新しいパラダイムに投資した企業が最大の成功を収めるでしょう。だからこそ、iCloudはAppleのデバイスやプラットフォームのための単なる機能ではなく、Appleの将来の成功を左右する鍵となるのです。
[マイケル・ガーテンバーグは、ガートナー社で相互接続された消費者の世界を取材するアナリストであり、長年のMacユーザーです。本稿で表明されている意見はガーテンバーグ氏自身のものです。 ]