さて、これが私にとって新しいiPadアプリです。Microsoftのコンセプトをベースに、シアトル在住の2人のプログラマー(Microsoft社員ではない)がKickstarterの資金援助を受けて開発したアプリです。一言で言えば、ZantherのTaposéです。

この3ドルのアプリは、2009年に公開されたマイクロソフトのコンセプトビデオからインスピレーションを得ています。このビデオでは、「Courier」と呼ばれるタブレット端末の提案が紹介されていました。残念ながら、Courierはプロトタイプ以上のものにはならず、マイクロソフトは2010年春にこのプロジェクトを中止しました。
TaposéはCourierの日記のメタファーを踏襲し、複数の「ノートブック」を作成できるようになっています。ノートブックにはテキストを入力したり、フリーハンドで絵を描いたりできるほか、画像、動画、録音した音声、WebやiOSのマップからのクリップ、さらには連絡先情報から生成された「名刺」までも配置できます。さらに、テキストをハイライトしたり、リスト(箇条書き、順序付き、チェックボックス付き)を作成したり、付箋を作成したりすることも可能です。
Courierプロジェクトのオリジナルビデオでは、2つの独立したディスプレイを備えた折りたたみ式のノートブックのようなデバイスが紹介されています。iPadには当然ながら画面が1つしかありません。そこでZantherは、Courierの「背骨」部分をバーに改造し、ドラッグすることで2つの独立したペインを作成できるようにしました。このバーは、移動させたい情報を保管する場所としても機能します。例えば、連絡先や地図上の場所をバーにドラッグ&ドロップし、そこからノートブックのページにドラッグできます。場合によっては、一方のペインからもう一方のペインに直接アイテムをドラッグすることもできます。
このデュアルペイン表示は、実はTaposéの最も便利な機能の一つです。画面の片側でウェブページを開きながら、別の場所でメモを取るといったことが可能です。iPadを仕事に使ってみようとした時、まさにこの機能を探していました。Macでは当たり前の機能なのに、iPadを使うとなくしまって困ってしまうのです。
統合された共有ツールを使えば、ノートブックを誰かにメールで送信したり、EvernoteやDropboxにアップロードしたり、アカウントを作成すればTaposé専用の無料オンラインストレージスペースを利用したりできます。(年間25ドルのアプリ内サブスクリプションに加入すれば、ストレージ容量無制限にアップグレードできます。)ただし、ページやノートブックを共有する相手もTaposéを所有している必要があります。開発者によると、Android版とWeb版は「近日公開」とのことです。
Taposéのその他の機能については、期待できる点が数多くありますが、粗削りだと表現するのは、映画『ジョン・カーター』が期待を少し下回ったと言うようなものです。アプリのインターフェースは不安定で、時折予測不能な動作をします。例えば、画面上の領域を指でなぞってクリッピングし、そのクリッピングをホールドバーからノートのページにドラッグできる便利な機能があります。しかし、フリーハンドツールで描いたものは実際にはクリッピングに反映されないようです。
App Storeの説明で、開発者たちは「Taposéがタブレット1台分を埋め尽くすほどの機能に取り組み、再発明しようとしているように見えるなら、それはまさにその通りかもしれない」と書いている。これは1つのアプリに課せられた大きな要求であり、おそらく見当違いだろう。1つのことをうまくこなすだけでも大変なのに、ましてやいくつもの機能を搭載するとなるとなおさらだ。
Taposéの開発者たちがCourierのビデオを一つ一つ見直し、オリジナルのビジョンに忠実であろうとしたことは明らかです。もしかしたら、忠実にやり過ぎたのかもしれません。結局のところ、Courierは結局は出荷されなかったコンセプト製品であり、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせに基づいていました。あるハードウェアでうまく動作するものが、別のハードウェアでも同じように動作するとは限りません。例えば、Courierでは手書き認識が当然のように機能していましたが、Taposéではその機能が全くありません。
もっと正確に言えば、Courierのビデオは、まさにビデオでした。他人のコンセプトビデオを実際に動作するアプリに作り替えると、当然ながら、当たり外れがあります。スティーブ・ジョブズの有名な言葉にもあるように、「デザインとは、見た目や感触だけではありません。デザインとは、どのように機能するかです」。Taposéの開発者たちは、アプリがどのように機能すべきかについて、あまり時間をかけて考えていないようです。
おそらく最も驚かされたのは、TaposéがMicrosoftのエンターテインメント&デバイス部門でCourierチームを率いたJ・アラード氏の支援を受けているという点だ。アラード氏のCourierチームにおける役職は「最高エクスペリエンス責任者」だったが、Taposéが最も苦労しているのはまさにその「エクスペリエンス」の部分だ。
結局、タポセは実際には存在しなかったものを忠実に再現しようとすることで傷ついてしまう。それはまるでアトランティスの縮尺模型を作るようなものだ。